野中 星
【普天間基地移設報道にみる〃外圧〃の内在化<2010. 7.16> [週刊 金曜日 807号]】
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┃ 野中 星 ┃
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┃ 普 天 間 基 地 ┃
┃ 移設報道 にみる┃
┃〃外圧〃の内在化┃
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首相すら吹き飛ばしてしまう米軍普天間飛行場とはいったい何だろうか。メディアが伝えた沖縄問題は結局、外交や安保ではなかった。不思議なことに米軍基地の実態すらあまり報じられなかった。メディアは「鳩山騒動」に踊った。「学べば学ぶほど」と鳩山前首相が学習した米海兵隊の「抑止力」について分析した報道はあっただろうか。
「普天間」が米海兵隊の飛行場で、沖縄の街のど真ん中にある｢世界一危険｣な基地であることはよく報じられた。しかし、なぜ沖縄に海兵隊が配置され、普天間の機能を維持することが日米関係にどのような意味を持つのか──などの基本的な情報はまったく伝えていない。
首相が職を睹すほどの問題なのかどうか、メディアの報道だけではさっぱり分からない。あれほど連日大騒ぎしたのにだ。
日本に駐留する海兵隊員は約一万六○○○人おり、うち約三○○○人が山口県岩国基地に配備されている。米軍再編で八○○○人がグアムへ移転する。沖縄に残るのは差し引き約五○○○人でしかなく、本格的な戦闘には到底足りない。
この中には普天間飛行場のヘリコプター部隊も含まれているほか、技術者らメンテナンス要員、コックや指令部の事務職もいる。実戦兵力は沖縄に残る隊員の半数ほどだろうか。
具体的な数を米政府は公表しておらず、日本側も把握していない。ただ明らかなのは、数千人の部隊がやれることはかなり限定的で、鳩山前首相が「抑止力」として不可欠だと力を込めて主張するほどのものではない、ということだ。
海兵隊が出動するときに乗船する海軍艦船は長崎県佐世保基地に配備されている。朝鮮半島情勢が悪化したとき、船は佐世保からいったん南下し、沖縄で隊員と物資を積んで、再び北上する。戦闘に欠かせない船は佐世保、ジェット戦闘機は岩国に配備されている。沖縄から海兵隊を本土へ移すのは軍事的に可能なのだ。北朝鮮をにらむ海兵隊はかつて岐阜県と山梨県に駐留していた。
海兵隊高官へインタビューし、「日本政府が必要な施設を用意すれば、九州などへ海兵隊を移せるか」と質問すると、彼らの答えは間違いなく「イエス」だ。
米国が日本国内で好き勝手に米軍基地の配置を決めるようでは、「占領」と変わらない。軍隊は政治が与えた基地を使って作戦を組み立て、戦略を遂行していく。当たり前の「文民統制」だが、日本のメディアはそれさえ忘れてしまったかのようだ。
挙げ句には、「アメリカの我慢が限界」「日米関係が傷つく」と、「鳩山騒動」を焚きつける。
｢普天間｣をめぐる報道から浮かび上がったのは「外圧の内在化」だった。
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