《新聞・雑誌記事より》

野中 星w
【 本多 勝一 ルポ再録  ┏━━━━━━━━┓  ┃アイヌ民族の現在┃  ┃<1974年 8月 5日>┃  ┗━━━━━━━━┛  《前文からの続き》】

〔&w〕
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野中 星
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☆彡nochiwさんのまち

《前文からの続き》

 このおばあさんの義弟、つまり夫の弟夫妻もアイヌ民族である。息子がいたが、家出同然で帰らなかった。近所に住む前述のA牧場主が、この老夫婦の土地に目をつけたのは、つい三、四年前だ。夫の体が弱っていた。Aは一家に「心底から親切な」世話をした。やがて夫が死ぬと、Aは言った――「おばあちゃんの畑はデコボコや荒れ地が多いで、整地してきれいにしてやるでや」
 まことに「親切」にも、ブルドーザーがはいり、大規模な整地作業がすすんだ。一方、おばあさんには農協に少し借金があった。理事のAが農協で細工をしたらしい。農協はおばあさんに返済を求め、同時にAが「畑を買ってあげるでや」と申し出た。バカ安い値段だ。おばあさんは断った。とたんにAが「ブルドーザーなどの整地代を払ってくれや」と居直った。
 農協の返済もできず、整地代もむろん払えぬおばあさんは、バカ安い値で、泣く泣く売らされた。登記手続きが終わったのは、一昨年の秋である。
 このアイヌ民族兄弟の悲劇をきいたある第三者が、怒って告発しようとした。だが、地域社会のしがらみは、そう簡単ではない。仮りに勝訴しても、おばあさんは近くの「敵」から死ぬまで日常的にいやがらせを受けることが目にみえている。それよりも、いかに表面的であれ、おばあさんが「敵」から「親切に」飼いごろしにされている方が、当人にとってはわずらわしくない。したがって当人が訴訟にもはや非協力的であり、これでは告発も有利に展開できはしない。
 かくて事件は「丸く」おさまっている。江戸時代と全く同じように。
 家出同然だった息子が帰ってきてこれを知った。激怒した息子はAを「ぶっKOROしてやる(注:『殺』がフィリタリングに掛かる為ローマ字表記)」と公言した。Aはびくびくして、おばあさんがA牧場に働きに行くと、一日で一万円とか二万円をにぎらせ、おばあさんは「気味がわるい」と思った。
 その後Aは殺されていないから、たぶん息子も冷静さをとりもどしたのであろう。だが、似たような例が他にたくさんあれば、その中から犯罪を実行する青年が現れるのも、ほとんど当然ではないか。AやBの行為の方が、より本質的犯罪であり、原因なのだから。
 侵略され、差別されつづけてきたアイヌ民族は、今なおこのようなものである。

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●『本多勝一 ルポ短篇集』(朝日新聞社、1981年)。北海道でのかけだし記者時代から1980年までの20余年間に『朝日新聞』に書いたルポを中心に、比較的短い31篇を集めている。

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